一度記事を書き上げたあと、原稿のクオリティを左右するのが「推敲」です。文章を見直して、誤字脱字や不適切な文章表現をチェックしたり、より読者に伝わる表現になるように見直したりすることで、質の高い記事へと仕上がっていきます。
この記事では、現役Webライターとして膨大な記事を書いてきた筆者が、推敲のやり方を紹介します。記事推敲のやり方がわからない、自身の推敲では不十分と感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
そもそも推敲とは？
推敲とは、文章を何度も練り直すことです。伝わりにくい文章表現を変更したり、句読点の打つ位置を変えたりする作業のことです。（正確には正しくないかもしれませんが）推敲には、誤字脱字や文法の誤りなどを修正する、というニュアンスもあります。
つまり「1度書いた文章を、ブラッシュアップしよう」というのが推敲ですね
推敲とよく似た言葉に「校正」があります。校正も、文章の誤字脱字や文法の誤りなどを訂正する作業です。校正を行うのは、通常、編集者など第三者です。一方、推敲の主体は自分で、自身で文章を見直すことを指します。
ライターは、編集者などに記事を納品する前に、必ず推敲をします。たとえプロのライターであっても、推敲していない文章には誤字脱字や主述のねじれなどがありますし、読者に伝わりにくい文章もあるものです。大して見直しもせずに公開した文章は、高確率で駄文です。丁寧な推敲こそが、質の高い記事へと仕上げる鍵となっています。
【STEP1】1度記事を寝かせる
それでは、フリーのWebライターとして記事を書き続けている筆者が、実際に推敲する手順を紹介します。
最初にすべきことは、記事を見直すことではありません。書き上げた記事をすぐに推敲するのではなく、一度寝かせて、時間を置いてから推敲するのが効果的です。
なぜ、1度記事を寝かせることが重要なのでしょうか？実は、記事を書いた直後は、冷静な状態ではありません。
まず、記事には感情や論理をありったけ原稿に詰め込みます。そのため、記事を書き終えたあとは、感情が高ぶった状態です。さらに、達成感や満足感に満たされます。
こういった感情や満足度の高い状態では冷静になれず、客観的に自分の記事を見直すことができません。客観的に見ればわかりにくい文章でも「この表現なら読者に伝わるでしょ！」と、バイアスがかかってしまうのです。
また、執筆中には思い浮かばなかったアイディアやよりよい表現が、時間を置くことで浮かんできます。
そのため、記事を書いたあとに一度リフレッシュして、あらためて確認することが不可欠なのです。
1晩以上置いて翌日以降に記事を推敲するのがおすすめ。しかし、時間がないときは「2～3時間置いて記事を推敲する」でも十分でしょう。
この記事も1度書き上げた後、翌日に推敲しています。
【STEP2】目視で記事全体を見直す（10のチェックポイント）
さて、時間を置いた後、記事の見直しに入ります。まずは、目視で記事を最初から最後まで読み直し、誤字脱字や文法の誤り、よりよい表現に変えられる箇所がないか、などをチェックしていきます。
この際、筆者が特にチェックしておきたいと考えているポイントは、次の10点です。
次から詳しく解説します。
①結論先行になっているか
紙の本と異なり、Web記事に対して読者はすぐ答えを求めています。そのため、Web記事は結論を先に伝えることが重要です。
Web記事ではPREP法という手法を用いて書かれることが一般的です。PREP法とは、読者に伝わりやすいように、次のような文章構成で書く方法を指します。
- Point（結論）…冒頭で結論を伝える
- Reason（理由）…結論の理由を説明する
- Example（例示）…例え話やデータなどを用いて、結論の説得力を強める
- Point（結論）…結論を再提示する
上記の文章構成を見ていると、最後だけでなく、最初にも結論を伝えるようになっています。初めに結論を伝えることで、読者はすぐに答えを得られるのです。
各見出しで、なるべく1～2文目に結論を伝えるのがベスト。文章の中盤、あるいは最後にしか結論がない場合、結論の箇所を調整できそうかチェックしてみてください。
②根拠・理由が明確か
先ほどのPREP法には「Reason（理由）」「Example（例示）」の2つが盛り込まれています。結論（主張）のみでは読者は納得しないため、理由や根拠で主張を裏付けることが不可欠です。
理由には「なぜその主張をするのか？」、根拠には「主張を補足するデータや体験談」を記載しましょう。結論しか伝えていない見出しがあれば、理由や根拠を補足します。
③主語と述語のねじれがないか
主語と述語がねじれている（主述のねじれ）と、意味が伝わりにくい文章になります。主述のねじれとは、次のような文章を指します。
僕はバラの花が好きで、美しい。
この文章で主語は「僕」、述語が「美しい」です。つまり、上の文章では「僕が美しい」ということになるので、おかしいですね。この文章では、主語の「僕」に合わせるか、主語を「バラ」にして主述のねじれがないように修正します。
- 僕はバラの花が好きで、美しいと思う。
- 僕はバラの花が好きだ。バラは美しい。
主述のねじれは、1つの文章に主語が2つ存在する時に発生します。この場合、上記のように、1文を2文に分けてそれぞれに主語を設定してあげると、意味が通じやすい文章となります。
④一文が長くなっていないか
先ほどの主述のねじれにも通じる話ですが、一文が長くなりすぎると、非常に見にくい文章となります。次のような文章を見てみましょう。
僕はWebライターという仕事をしていて、毎日自宅で記事を書いているが、時にはアイディアやよい文章表現が思いつかず、筆が進まないことがあるので、そのような時はリフレッシュのためにカフェへ場所を移す。
こちらの文章、読みにくいと感じるのではないでしょうか？文章構造が複雑になるほど、読者には読み解くエネルギーを求められます。
そのため、1文をなるべく短くして、読みやすい文章にしてみましょう。
僕はWebライターという仕事をしている。毎日自宅で記事を書いているが、時にはアイディアやよい文章表現が思いつかず、筆が進まないことがある。そのような時は、リフレッシュのためにカフェへ場所を移す。
先ほどの文章と比べても、読みやすい文章になりました。ここでのポイントは「一文には1つのメッセージ」を意識することです。1つの文章に「あれもこれも」と盛り込むと、見にくい文章となってしまいます。
⑤重複表現がないか
重複した表現は、読み手に稚拙な印象を与えます。また、読み手に負荷がかかってしまうので、重複表現はなるべく避けるようにしましょう。
重複表現には、次のような文章があります。
- 頭痛が痛い
- 違和感を感じる
- 必ず必要
- 一番最初
- 事前に予約（「予約」には前もって約束するという意味がある）
こういった口語では違和感がない重複表現も、文章では不自然な表現です。
慣れで気づかず使っている方も多いので、重複表現は特に注意してチェックしましょう。
⑥文末が3回以上連続していないか
文末には「～ます。」「～です。」「～である。」といったバリエーションがあります。この文末が何回も連続すると、稚拙な印象を与える文章となってしまいます。
たとえば、次のような文章を見てみましょう。
僕は朝にジョギングします。毎日10km走るので疲れます。ですが、走った後は爽快感を覚えます。
なんだか、小学生の日記のように「幼い文章だな」と感じませんでしたか？同じ文末表現は3回以上連続しないようにしましょう。
先ほどの文章を修正すると、次のようになります。
- 僕の日課は、朝のジョギングです。毎日10km走るので疲れます。ですが、走った後は爽快感を覚えます。
- 僕は朝にジョギングします。毎日10km走るので疲れますが、走った後は爽快感を覚えます。
ただ、文末表現の連続は、目視では見落としてしまうことがよくあります。そのため、文末表現のチェックは、後述する「文章校正ツール」をあわせて使うと効果的です。
⑦代名詞を多用していないか
Web記事では、なるべく代名詞（あの、これなど）を使わないほうがよいとされています。なぜなら、文中に代名詞が出てくると、前後の文章から意味を読み解く手間が生まれてしまうからです。
書籍と異なり、Web記事では最初から最後まで1文ずつ読む読者は多くありません。そのため、Web記事の文章に代名詞が多用されていると、読者に負荷がかかってしまうのです。
指示代名詞は、その内容を明確にできないかチェックしてみましょう。場合によっては、省略するのも効果的です。
- 【市場調査についての文章】この報告書を読むと、○○市に出店する重要性がますます高いと分析できます。
- 新商品開発プロジェクトは重要です。これを成功させるために頑張りましょう。
- 市場調査の報告書を読むと、○○市に出店する重要性がますます高いと分析できる（指示代名詞の内容を明確に）
- 新商品開発プロジェクトは重要です。成功させるために頑張りましょう（指示代名詞を削除）。
⑧表記が揺れていないか
記事でよくあるのが、表記揺れです。表記揺れとは、次のようなケースを指します。
- 昨日観たシリーズ2の映画は素晴らしかった。昨年みたシリーズ1の映画もすばらしかったが、それ以上におもしろかった。
- SNSで誹謗中傷したことが原因で、会社をクビになったというニュースを見た。あらためて、ソーシャルネットワーキングサービスは正しい使い方をしなければいけないと感じた。
このように、表記揺れには「漢字かひらがなか（素晴らしい・すばらしい）」「同じ意味でも異なる表現を用いる（SNS・ソーシャルネットワーキングサービス）」といったケースがあります。
表記揺れがあると言葉のバリエーションが増えるため、読みにくい文章になってしまいます。極力、表記揺れはないようにしておくのが理想です。
ただ、一概に「表記揺れ＝悪」とは言えません。たとえば「素晴らしい」「すばらしい」と表記が異なっても、さして問題ではないでしょう。ただ、同じ意味でも異なる表現を用いる表記揺れ（SNS・ソーシャルネットワーキングサービスなど）は、読者に内容がしっかり伝わらない恐れがあるので、ここは必ず統一しておくようにしましょう。
⑨こまめに改行を入れているか
Web記事では特に、改行を入れることが重要です。改行がないまま長文が続くと、視覚的に抵抗感を覚え、また読むのに余計なエネルギーを要してしまいます。
次のような文章を見てみてください。
日本の四季は美しく、それぞれの季節に特有の魅力があります。春は桜が咲き誇り、多くの人々が花見に出かけます。夏は花火大会や海水浴が楽しめ、活気に満ちた季節です。秋は紅葉が美しく、山々が赤や黄色に染まります。冬は雪景色が広がり、スキーや温泉旅行が人気です。このように、日本には四季折々の風景を楽しむことができる場所が多くあります。友人や家族と共に季節の行事を楽しむことで、日常の忙しさから解放され、心身ともにリフレッシュすることができます。特に、春の花見や秋の紅葉狩りは、自然の美しさを堪能できる素晴らしい機会です。季節の行事を通じて、日本の風景と文化の豊かさを再認識できます。
どうでしょうか？このような文章、そもそも読む気も起きないでしょう。
メディアにもよるものの、100～200文字を目安に改行を入れるようにしましょう。
日本の四季は美しく、それぞれの季節に特有の魅力があります。春は桜が咲き誇り、多くの人々が花見に出かけます。
夏は花火大会や海水浴が楽しめ、活気に満ちた季節です。
秋は紅葉が美しく、山々が赤や黄色に染まります。
冬は雪景色が広がり、スキーや温泉旅行が人気です。
このように、日本には四季折々の風景を楽しむことができる場所が多くあります。
友人や家族と共に季節の行事を楽しむことで、日常の忙しさから解放され、心身ともにリフレッシュすることができます。特に、春の花見や秋の紅葉狩りは、自然の美しさを堪能できる素晴らしい機会です。
季節の行事を通じて、日本の風景と文化の豊かさを再認識できます。
同じ文章の内容でも、改行を入れるだけで、視覚的にやさしい文章になりました。
昨今、パソコンよりもスマホで見るユーザーが増えたので、より改行の重要性が増したといえます。こまめに改行を入れて、視覚的に優しい文章を作ることを心掛けましょう。
⑩箇条書きや表を使っているか
文章だけでなく、視覚的にも読みやすい文章を作ることも重要です。たとえば、複数の事柄を列挙する時は、箇条書きを使うほうが理解しやすくなります。
日本の夏には多くの魅力があります。たとえば、海水浴や花火大会、祭り、キャンプ、バーベキューが挙げられます。
日本の夏には多くの魅力があります。たとえば、次のようなものが挙げられます。
- 海水浴
- 花火大会
- 祭り
- キャンプ
- バーベキュー
また、料金や機能の違いなどを説明する際は、表を使うほうが視覚的に理解しやすくなります。
弊社のサービス料金は、基本料金として月額5,000円がかかります。さらに、インターネット接続料が月額2,000円追加されます。オプションサービスとして、ウイルス対策ソフトの利用には月額1,500円が必要です。
また、リモートサポートサービスを利用する場合は、1回につき3,000円の追加料金が発生します。もし、初期設定サービスを希望される場合は、別途5,000円の1回料金がかかります。
| サービス | 料金 |
| 基本料金 | 月額 5,000円 |
| インターネット接続料 | 月額 2,000円 |
| ウイルス対策ソフト | 月額 1,500円 |
| リモートサポート | 1回 3,000円 |
| 初期設定サービス | 1回 5,000円 |
このように、文章を読み直した時に箇条書きや表にできる箇所があれば、積極的に活用してみてください。
箇条書きや表を見ると人間は目を留めるものなので、ページの滞在時間の向上にも役立ちます。
【STEP3】文章校正ツールでチェックする
さて、10のチェックポイントを目視でチェックしました。しかし、それでも不十分です。なぜなら、目視では文章の誤りなどを見落としてしまうことも多いからです。
たとえば、10のチェックポイントの中にあった「文末が3回以上連続していないか」「表記が揺れていないか」は、目視でチェックしても抜け漏れてしまうことがあります。人間のチェックには限界があるのです。
そこで活用したいのが「文章校正ツール」です。文章校正ツールとは、文章を入力すると、文章の間違いや不適切な表現などをチェックしてくれるツールとなっています。
現役ライターの筆者が実際に使っている、文章校正ツールを3つ紹介します。
①文賢
文賢は、ウェブライダー社が提供している、有料の文章校正ツールです。月額2,178円（税込）から利用できます。
文賢が優れているのは、文末表現の3連続や重複表現、表記揺れなど、文章表現や言い回しなどをチェックする機能が非常に優れている点です。
使い方は簡単で、文賢に文章を入力するだけ。表現を変更したほうがいい箇所や、誤字脱字などを指摘してくれます。
目視で見落としがちな内容を文賢が指摘してくれるので、筆者も重宝しています。また、文章の音声読み上げやAIによるアシストなど、推敲に便利な機能が揃っています。やや値は張りますが、よりよい文章を書きたい方にとって役立つツールです。
文賢は、文章表現や言い回しを修正するのに非常に役立つツールですが、誤字脱字のチェックはやや精度が低い印象。たとえば「私はライターでです。」という誤字を文賢は見落とします。そのため、文賢だけでなく、ほかの文章校正ツールも併用するようにしましょう。
②Word
Wordは、文章校正ツールとしても非常に優れています。特に、誤字脱字を見抜くのに優れているのが特徴です。誤字脱字や文章表現の間違いなどを、かなり高精度でチェックしてくれます。筆者も、推敲にWordが欠かせません。
Wordで文章をチェックするには「エディター」という機能を利用します。
すでにWordを導入している方も多いと思うので、ぜひ推敲に活用してみてください。
③Enno
Ennoは、無料で誤字脱字などをチェックできるツールです。会員登録も不要で、簡単に利用できるのがEnnoの利点です。
利用方法は簡単で、文章を貼り付けるだけで、誤字脱字や変換ミスなどをチェックしてくれます。
ただ、誤字脱字のチェック精度があまり高いとは言えません。たとえば「僕ははみかんが好きだ」という誤字も、Ennoは無視してしまいます。
Ennoは推敲のチェック精度は高くないとはいえ、無料にしては十分な機能を備えています。十分役立つ文章校正ツールなので、ほかのツールと併用して使うようにしましょう。
【STEP4】Wordで音読してもらう
ここまで「目視」と「文章校正ツール」の2重でチェックしました。しかし、筆者から言わせてみれば、まだ不十分です。この二重チェックでも誤字脱字を見落としたり、読者に伝わりにくい表現が残っていたりします。
そこで、推敲に役立つのが音読です。人間は、読み書きよりも話す・聞くほうが慣れているので、誤字脱字やわかりにくい表現なども音読によってすぐ見抜くことができます。
音読におすすめなのが、Wordの「音声読み上げ機能」です。入力した文章を読み上げてくれるので、耳で聞きながら、おかしいと感じた文章を訂正できます。
実際に使ってみるとわかりますが、音声読み上げ機能を利用すると、不自然な文章をすぐにあぶり出せます。音声読み上げは推敲の精度をかなり高めてくれるので、ぜひ活用してみてください。
【STEP5】ほかの人にチェックしてもらう
この記事では「推敲の主体は自分」ということをお伝えしました。とはいえ、記事のクオリティを高めるには、誰かに見てもらうことも大切です。
たとえば、自分では伝わると思っていた表現が、ほかの人が見ると理解できないことも往々にしてあります。
また、自分が知っている専門用語でも、ほかの人が知っているとは限りません。無意識に使用している専門用語も、ほかの人にチェックしてもらうことで、補足や言い換えの必要性を認識できます。
このように、ほかの人からフィードバックを得ることで、自分では思いつかなかった新たな視点が見つかります。
社内で記事を書いている方は、上司や、その記事の専門部署などに原稿をチェックしてもらうと効果的です。また、その記事について知識のない方に読んでもらうのも非常に効果的です。読者に難しい専門用語や表現を簡単に洗い出せます。
まとめ：丁寧な推敲が記事のクオリティを高める
推敲は、文章を何度も練り直すことです。伝わりにくい文章表現を変更したり、句読点の打つ位置を変えたりすることです。1日原稿を寝かせ、「目視」→「文章校正ツール」→「音声読み上げ」→「ほかの人にチェックしてもらう」の順で文章を見直すことで、クオリティの高い文章に仕上がります。
この記事で紹介した内容は、現役ライターである筆者の実際の推敲手順です。ぜひ参考にしていただき、すてきな記事に仕上げましょう。
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